おひとり様の遺言


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 相続人となれる者は法律で定められています。相続人となるのは配偶者、直系卑属(自分の子、自分の孫など)、直系尊属(自分の両親、自分の祖父母など)、兄弟姉妹(含まれるのは甥、姪まで)とされています。それでは、法定相続人となる者が全くいない場合、相続はどうなるのでしょうか。
 調査によると生涯未婚率(50歳時の未婚率)は男性で20.1%、女性で10.6%と、1990年度から大きく上昇を続けています。配偶者も子どももおらず、両親や兄弟も他界してしまった…。いわゆる「おひとり様」と呼ばれる方たちですが、今後はさらに増えていくと思われます。自分の相続人が全くいない場合、遺言を残す必要はあるのでしょうか。また、遺言書を残すならどのように書けばよいのでしょうか。

生涯未婚率の年次推移

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国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料2014」より

相続人も遺言書もないなら、どうなる?

 法定相続人となる者がおらず、遺言もない場合、亡くなった方の財産は国のものになります。家庭裁判所から選任された相続財産管理人が改めて相続人がいないことを確認し、債務の清算が終わった後にもまだ相続財産が残っている場合は、亡くなった方の財産は国庫に帰属することになります。
 財産を渡したい人なんて誰もいないし、自分の死後の財産がどうなろうと構わない…。このようなお考えをお持ちの方であるなら、遺言を残す必要はないでしょう。お世話になった人に財産を譲りたい、市や母校に寄付をしたい…。このような希望をお持ちであるなら、遺言を残しておかないと希望が叶えられることはありません。


お世話になった人に財産を譲る場合

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 お世話になった人など、法定相続人でない人に財産を譲りたい場合は、「遺贈する」という言葉を使います。「相続させる」という文言は使えません。
 遺贈とは、遺言によって、遺言者の財産の全部または一部を贈与することをいいます。「全ての財産を遺贈する」、「財産の半分を遺贈する」というような割合を示して遺贈するものを包括遺贈といいます。対して、「金100万円を遺贈する」、「ピカソの絵画を遺贈する」というように特定の財産を指定する遺贈を、特定遺贈といいます。
 遺贈をする場合は、その人に遺贈をする理由や感謝の言葉などを付言にしておきましょう。自分の気持ちや遺言の真意を理解してもらいやすくなります。

特定遺贈をする遺言書の例

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市や団体に寄付する場合

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 自分が住んでいた市町村や、自分の母校などに寄付をしたいと考えられる方もおられると思います。こちらも、遺贈の形で財産を譲ることになります。
 財産を受け入れる都合などもあるので、寄付をしたい団体へ事前に申し入れをしておきましょう。遺言を残す場合、団体へ寄付をする旨を書いた遺言書と共に、その団体のパンフレットなども保管しておくとより良いです。寄付をするのがどこの団体かがわかりやすくなり、取り違えなどの可能性が小さくなるからです。


最後に

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 おひとり様が遺言を残す場合、相続人が遺言の内容を実現するということはもちろんあり得ません。申立てがなければ家庭裁判所も相続財産の管理人を選任できないので、あらかじめ遺言執行者を指定しておくことを強くオススメします。
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お問い合わせ

 厚生労働省によると、2035年の生涯未婚率は男性が29%、女性が19%とさらに増加することが予測されています。また、配偶者や子どもがいても彼らが先に亡くなってしまったら、結果的におひとり様になってしまいます。誰もがおひとり様になる可能性があるのです。

・おひとり様だけど、遺言書を残しておいたほうがいい?
・相続人ではない人に財産を譲りたい!
・今は違うけど、将来おひとり様になるかも…

 上記のようなご要望、お悩み、疑問のある方は、是非さくらい行政書士事務所までご相談ください!
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2016-05-25 | Posted in 遺言書Comments Closed 

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