法改正で自筆証書遺言はどう変わった?



 相続への対策というと、皆様がすぐ思いつくであろうものが遺言。その中でも自筆証書遺言はペンと印鑑さえあれば作成できましたが、意外とハードルが高いものでした。
 平成30年での法改正前はどんなものが、自筆証書遺言作成の障害となっていたか。そして、法改正が施行された後ではどう変わったのかを解説いたします。


改正前自筆証書遺言の問題点

全文を自筆で書かなければならない


 自筆証書遺言という名前のとおり、平成30年の法改正前では遺言の内容全てを自分で書かなければなりませんでした。
 不動産では地目・地積・家屋番号等を、預貯金では店名・口座番号等を書く必要がありました。これは、相続財産が多岐に渡る方や年齢が理由で手が不自由な方にとって負担の大きいものでした。

自筆証書遺言の保管は自己責任


 自筆証書遺言をどう保管するかは、遺言者が決めねばなりませんでした。
 書き上げた自筆証書遺言は自宅で保管するということがほとんどだと思います。この場合、第三者に勝手に見られたり、紛失してしまうなどのリスクが生じます。
 だからといって、遺言者が死亡すると開けられなくなるので銀行などの貸金庫に遺言書を保管するのは絶対にやめてください。


改正後、どう変わったか


 法改正の結果、直筆要件の緩和保管制度の新設が行われました。


直筆要件の緩和


 自筆証書遺言の内、財産についての部分は直筆でなくてもよいとされました。
 本文・日付・氏名については直筆でなければいけないとしつつも、財産目録については直筆であることを要しないとされました。

 これにより、パソコンで財産目録を作成したり、預貯金通帳や不動産登記事項証明書の写しを財産目録としたりすることできるようになります。遺言者の負担が軽減されることになりました。

 ただし条件として、遺言者は財産目録の全ページに署名押印をしなければなりません。

遺言書保管制度の新設


 自筆証書遺言を法務局で保管してもらう制度(遺言書保管制度)が整備されました。
 自筆証書遺言を作成した遺言者は、管轄の法務局に設置された遺言保管所にこれを持参し、遺言書保管の申請をすることができます。管轄の法務局とは、遺言者の住所地もしくは本籍地または遺言者が所有する不動産の所在地の法務局のことです。またこの際、遺言書は無封のままでなければいけません。

 遺言書保管の申請書に必要事項を記入し、受理されると遺言書の原本を保管するとともに遺言書の内容の画像情報等も保存されます。遺言者は、保管した遺言書をいつでも閲覧請求でき、保管の申請を撤回することができます。

 遺言書保管の申請をする際には、保管してもらいたい法務局への予約手数料が必要となります。保管の申請の手数料は、一件につき3,900円です。

 遺言保管所に保管されている自筆証書遺言は、検認手続きが不要となります。
 →検認手続きとは、こちらのページをご参照ください。


まとめ


 要件緩和と保管の両面から、自筆証書遺言が作りやすくなりました。
 この法改正の目的は、自筆証書遺言の普及を目的としています。

 しかし手間や費用がかかるものの、公正証書遺言の方が安全性・確実性で自筆証書遺言より優れています。どちらの方式で遺言を作成するかは、それぞれの長所短所を理解した上で選んでください。ふたつの遺言の違いなどは、こちらのページをご参照ください。

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2020-07-01 | Posted in 遺言書Comments Closed 

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