遺言書のテクニック ~予備的遺言~


16.5.31.3
 被相続人(亡くなった人)より先に法定相続人が亡くなった場合、その法定相続人の子が被相続人の財産を相続します。これを代襲相続といいます。
 親より先に子が亡くなっていたら孫に相続させるという制度ですが、これは遺言の内容にも適用されるのでしょうか。つまり、相続財産の受取人に指定していた人が先に亡くなってしまった場合、受取人の子が財産を相続することになるのでしょうか?
 遺言の内容が「相続させる」という場合(法定相続人に財産を譲る場合)のものと、「遺贈する」という場合(法定相続人以外に財産を譲る場合)のものとの2つのパターンを解説いたします。


 自分の配偶者、子、両親、兄弟姉妹などの法定相続人を受取人に指定する際には、「相続させる」という文言を使うことが一般的かつ便利です。
 「遺言者Aの土地家屋は、子Bに相続させる」という遺言があるとします。子Bが遺言者Aより先に亡くなった場合、遺言者Aの土地家屋は、子の子(遺言者の孫)であるCが代襲相続することになるのでしょうか。

16.5.31.1

 平成23年2月22日の最高裁で「原則として代襲相続は発生しない」という判決がでました。遺言書に書かれている財産を譲る先は受取人と書かれたその人限りと考えるのが妥当であるとの判断のようです。

 遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定する「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはない。
( 土地建物共有持分権確認請求事件 裁判要旨より)

 但し、CはBに代わる法定相続人であるので、遺産分割協議などで通常の相続分を主張することはできます。

「遺贈する」の場合

 法定相続人以外の人に財産を譲る場合は、「遺贈する」という文言を使います。(こちらの記事もご参照ください)
 「遺言者Aの土地家屋は、恩人であるBに遺贈する」という遺言があり、Bが遺言者Aより先に亡くなった場合は、Bの子であるCがAの土地家屋を相続するのでしょうか。

16.5.31.2

 実は民法の定めで、「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない」とされています(民法994条1項)。よって、Bが遺言者Aより先に亡くなってしまえば遺贈の効力が生じないので、Cは遺贈を受け取ることができません。

受取人死亡に対する備え

 受取人が法定相続人であるかどうかに関わらず、遺言者より先に財産の受取人が死亡してしまえば、その財産が誰のものになるかはわからなくなってしまいます。万全を期しておきたい場合は、遺言書の中で予備的な受取人を指定しておきましょう。

予備的な受取人を指定した遺言の例

16.5.31.4

 遺言者が遺言に別の意思を示していたときはその意思に従います。このような予備的な受取人を指定する場合は、誰が受取人になるかを明確にすることが重要です。「同氏の関係者に与える」などといった、受取人が誰なのかが曖昧な書き方をするのはやめましょう。
 また必須ではないですが、受遺者(財産を受け取る人)の人となりや、どのような由縁があって財産を譲るのかなどを説明する付言をつけておくと、相続人にも納得しやすい遺言書になります。


お問い合わせ

・そろそろ終活を始めた方がいいかも…
・お世話になった人にも財産を残したい!
・遺言書を書いてみたけど、これで大丈夫?

 上記のようなご要望、お悩み、疑問をお持ちの方は是非さくらい行政書士事務所までご相談ください!
お問い合わせ大無料


2016-05-31 | Posted in 遺言書Comments Closed 

関連記事