相続と裁判所


16.6.30.1
 相続や遺言の手続きのいくつかは、裁判所で行うことになります。
 普段なかなか行く機会がある場所でもないので、入りにくい、行きづらいと思われる方も多いでしょう。しかし、相続放棄や自筆証書遺言の検認は裁判所で手続きを行います。相続放棄を検討している方自筆証書遺言の方式で書かれた遺言を発見した方は、裁判所に赴く必要があります。


16.6.30.3
 相続や遺言の手続きの中で、裁判所で行うものを列挙します。
◇相続放棄の申述         ◇相続の限定承認の申述
◇相続の承認又は放棄の期間の伸長 ◇相続財産管理人の選任
◇特別縁故者に対する相続財産分与 ◇遺言書の検認    
◇遺言執行者の選任        ◇遺留分放棄の許可
◇遺留分の算定に係る合意の許可


どこの裁判所で手続きをするの?

16.6.30.2
 最高裁判所から簡易裁判所まで、裁判所にも色々な種類がありますが、相続や遺言の手続きはどこの裁判所で行うのでしょうか。
 相続や遺言に関わる審判は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。通常、住民票の除票に記載されている住所が最後の住所地になります。ほとんどの手続きの際には被相続人(亡くなった方)の住民票の除票が必要なので、確認のためにも取り寄せておきましょう。
 管轄する裁判所がどこなのかは、裁判所のホームページで調べることができます。

 →裁判所の管轄区域

手続きの解説

16.5.27.2
 裁判所で行う相続・遺言の各手続きを簡単に解説します。

相続放棄の申述

 相続人が、被相続人(亡くなった方)の借金やローンなどの負債を一切受け継がないようにするための手続きです。債務を受け継がない代わりに、被相続人の預貯金や不動産などの財産も相続できなくなります。相続放棄はこちらでも解説しています。
 後述の遺留分の放棄は被相続人が存命中に行いますが、相続放棄は被相続人の死後にしか行えません。

相続の限定承認の申述

 被相続人が残した財産の限度として、被相続人の負債を受け継ぐ限定承認を申述する手続きです。こちらで詳しく解説しています。
 

相続の承認又は放棄の期間の伸長

 通常、相続が開始してから3ヶ月の熟慮期間内に相続放棄、限定承認または単純承認(財産の負債も全て相続する)のいずれかをするか決めなければなりません。しかしどれを選べばよいか熟慮期間内に判断がつかない場合、裁判所に申述して熟慮期間を延長してもらうことができます。
 期間の伸長を申述せず、熟慮期間の3ヶ月を経過すると、単純承認したものとみなされてしまいます。

相続財産管理人の選任

 亡くなった人に相続人がいない場合、相続財産を清算するために相続財産管理人の選任します。亡くなった人にお金を貸している利害関係人や、後述の特別縁故者に財産を相続させるときなどに申述します。

特別縁故者に対する相続財産分与

 相続財産管理人が選任されている場合に、特別な縁故関係にあった人(長年住み込みで働いていた使用人など)が財産を相続するための手続きです。

遺言書の検認

 自筆証書遺言の場合、遺言者の死亡後に遺言書の検認という手続きを取る必要があります。公正証書遺言の場合、検認手続きは不要です。自筆証書遺言と公正証書遺言との違いはこちらで解説しています。

遺言執行者の選任

 遺言執行者を選任するための手続きです。遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための手続きなどを行う人のことを指します。遺言執行者の詳しい解説はこちらから

遺留分放棄の許可

 相続人が、相続財産の遺留分を放棄するための手続きです。相続放棄とは異なり、こちらは被相続人が存命の内に行います。

遺留分の算定に係る合意の許可

 一定の要件を満たす中小企業の後継者が、遺留分の算定についてなされた合意の許可を求める手続きです。

最後に

 以上の9種が裁判所で行う相続・遺言の手続きです。この中では、相続放棄遺言書の検認にご質問が集中しています。相続放棄については相続人となる方から、遺言の検認については被相続人となる方からそれぞれご質問をいただきます。終活は一人だけの問題ではなく、残される方にも考えてもらうものであると実感します。
 また、以前にテレビで紹介された限定承認にも関心が集まっているように思います。


お問い合わせ

 ただ遺言を残すだけでは相続対策としては不十分であり、その後にどこで、どのような手続きをするのかも抑えておく必要があります。終活は被相続人のみでするのではなく、残される相続人も協力して進めていきましょう。

・自分の希望を叶える遺言を書くには?
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2016-06-30 | Posted in 相続手続き, 遺言書Comments Closed 

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