遺言書を取り消したい!
目次
遺言の取り消し
「違う内容の遺言にしたい」「やっぱりなかったことに」という心変わりがあった場合や、「遺贈をしたい人が先に亡くなってしまった」「家屋を譲ろうとしていた相続人が遠方に引っ越した」など身辺に変化が起こった場合に、遺言の取り消しを検討されるかと思います。一度は有効に成立した遺言を取り消したいときは、どうすればよいのでしょうか。遺言を取り消す4つの方法とそのまとめを解説します。
1.遺言の方式で撤回する
民法1022条の規定では、遺言者は「遺言の方式に従って、(略)撤回することができる」とされています。遺言を撤回する旨の遺言を作成すれば、該当する取り消されたものとされます。
2.新しい遺言書を作成する
前の遺言と違う内容の遺言を作成すれば、前の遺言は取り消されたものとみなされます。遺言の前後は、記載された日付によって判断されます。日付の記載は有効な遺言の成立に不可欠な要件でもあるので、忘れないようにしましょう。
3.遺言に抵触する行為をする
新しい遺言を作成しなくても、遺言の内容と矛盾する行為をすれば、遺言が取り消されたものとみなされます。例えば、「ピカソの絵画を長男に相続させる」という遺言があるとします。遺言を残した後に、遺言中のピカソの絵画を誰かに売ってしまえば、その行為によって遺言を取り消したものとされるのです。
2.と3.の注意点
後の遺言や行為と抵触する範囲内でだけであり、抵触しない部分については取り消されません。
例えば、「ピカソの絵画とゴッホの絵画を長男に相続させる」という遺言があるとします。その後、「ピカソの絵画は次男に相続させる」という遺言を作成したり、ピカソの絵画を誰かに譲ったりすれば、遺言の該当部分は取り消されたことになります。ただし、新しい遺言やピカソの絵画を譲るという行為と関係のないゴッホの絵画の部分については、元の遺言の通り長男が相続します。
4.遺言書を故意に破棄する
あくまでその遺言を残した者が破棄した場合に取り消されるのであって、遺言者以外の者が遺言を故意に破棄すると、刑事罰や相続人資格の喪失などのペナルティが科せられることがあります。
また、遺言者が遺言の目的物を故意に破棄した場合でも、遺言書を破棄したものと同様に扱われます。「ピカソの絵画を長男に相続させる」という遺言があり、その遺言中のピカソの絵画を破り捨てたり燃やしたりすると、遺言が破棄されたものと同じとみなされます。
公正証書遺言の破棄
5.まとめ
遺言書は自筆証書遺言か公正証書遺言のどちらかの方式で作成されることがほとんどだと思われます。それぞれどの取り消し方がオススメかをまとめます。
自筆証書遺言の取り消し
自筆証書遺言の方式で作成された遺言書の場合は、破棄による取り消しがお手軽です。紛失への対策などで複数通の遺言を用意していた場合や身辺の状況が変わった場合などは、新しい遺言を作成すると古い遺言も取り消されるので、こちらの方法も便利です。
公正証書遺言の取り消し
上述の通り、公正証書遺言は破棄による取り消しはできません。公正証書遺言を取り消す場合は、遺言の方式に則った取り消しや新たに遺言を作成する必要があります。
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準備万端で書いた遺言であっても、身の回りや心情の変化によって希望に沿わない内容になる可能性があります。思いもよらない状況になることがあるので、遺言書を一度完成させたらそれで終わりではなく、取り消しの方法も抑えておきましょう。
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